エリカカップ2001

by ショーケン

 2001年5月27日、三河湾、蒲郡沖において「第15回エリカカップヨットレースIn蒲郡」が開催された。今年の参加艇は123艇と少々寂しい感があるが、100艇を越えるビッグフリートレースであることには変わりない。

 その日の朝、蒲郡港の台船の上で、円陣を組んで準備体操をする異様な集団があった。このレースに4年ぶりに出場するJUSTチームである。今年の始めにMUMM36「JUST EIGHT」を進水させ、待ちに待ったエリカ出場であるが、艇を上架させて準備している他チームに比べて、準備・練習不足であることは隠しようがない。気合でカバーしようというのであろう。

 準備体操が終わり、ホワイトボードを囲んで、レースコースの説明・ディスカッションミーティングを続ける彼らの目は真剣そのもの。前夜、蒲郡駅前の10名しか入らない小料理屋に18人を詰め込んで飲んだくれ、「蒲郡1番の高級クラブ」にて屋根が抜けるほどの大騒ぎをしていた連中と同じ集団とは思えない。しかし、見る人が見ると、「二日酔いで立っているのがやっとの状態を必死で我慢している」ようにも見えるかもしれない。戦いは既に始まっているのだ。

 スタートは2つに分けられている。我々は後スタートで、前のクラスがスタートしてから20分後のスタートである。風は北北西の風、約10kt。潮は下げ潮で、0.5kt前後の潮が沖から湾内へ流れている。大した影響はないだろうが、一応チェックする。今回はIMSのレースではないので、デッキ上には定員いっぱいの12名が乗りこんでおり、合計880kgである。IMSのリミットに比べて、225kgのウェイトがある。

 前のクラスがスタートした時、ラインはほぼイーブンだったのだが、すぐに風が左に振れ、我々のスタート時には完全な下有利な状態に。

 その影響で、リミットマーク付近は多くの艇が集まり、押し出されてリコールする艇も見られ、混乱気味。JUSTは真中より本部艇寄りの方からポートタックでラインへアプローチし、タックしてラインを流しながら、スピードをキープしつつ真中と下マークの間くらいでスタート。

 風がかなり左に振れているので、付近の艇は即タックして、我々の前をどんどん通過して行くが、我々は我慢してエンド付近まで走り、タックする。

 タックしてフレッシュウィンドをつかみ、艇はスルスル走り出した。マークはほぼ正面方向に見える。合計体重880kgでヒールを起こしながらスピードを維持。前を走っているのは「朝鳥」のみである。風はピークで16ktあるが、平均して10kt前後。曇り空の陰鬱な天気であるが、雨があがってくれただけでもありがたい。

 2回タックを入れて上マークをタックセットで回航し、0.5ozスピンをホイストする。Gust、Flawlessがすぐ後に続く。下マークまで順位の入れ替わり無しで、ノージャイブ、アーリーポートで下マーク回航。ジェノアでジャイブ時にトッパーが下りないなどのトラブルがあったが、何とかクリアして上りレグへ。

 次の上りレグ、我々はタックせずポートタック1本で走る。Flawlessはタックして左海面に出るが、我々との距離はほとんど変わらない。このレグでGustが前に出て、朝鳥、Gust、JUST、Flawlessの順で2上を回航。我々と同型艇のFlawlessは常に至近距離に位置し、全く気が抜けない。一つミスをすれば順位が入れ替わってしまう状況だ。

 マーク回航して、ほぼアビームで第3マークへ向かう。ジェノアを外取りして走る。艇のB-Max付近にいる重量級のクルー、ジャンボ森上が頼もしい。

 第3マークで0.5ozスピンをホイストし、第4マークへ。スピンホイスト後、ポール先端の解除シートがバウハッチに引っかかりポール先端が開いてしまいガイが外れたが、レイジーシートにポールをつけて対処する。デッキ上では、次のレグでジェノアをLMからMHへ替えようかの意見が出たが、LMのままで行くことに決定する。

 1ジャイブ入り、通常のレイジーブレイスでのマーク回航。順位は変わらず。Flawlessは3艇身後ろ。かなり詰められた。最終レグはFlawless石川氏得意の上りレグで、まだまだ気が抜けない。

 だが、体重880kgでヒールを殺しまくるJUSTの走りにFlawlessも1歩及ばず。朝鳥、Gust、JUST、Flawlessの順でフィニッシュ。クラス(Fクラス)内での戦いには勝利をおさめたようだ。後は小型艇がどこまで走っているかが問題になる。

 しかし、後でフィニッシュした小型艇で大きく走った艇はなく、JUST4度目の総合優勝となった。
何か信じられない気分だが、今回の優勝ヘルムスマン、小松大師匠によると勝利の法則が存在するらしい。

「今までJUSTがエリカカップに優勝したときは、必ず女性が乗っていた。」
 と言うことは、今回の勝利の女神は準備体操を指導していたトモちゃんだったことになる。
めでたし、めでたし。

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