遥かなるコラート(2)

by チャーリー岸田

その2 コラート行きバス

 翌朝我々は、電車でモーチットに向かい、そこからコラート行きのバスに乗ることになった。
 モーチットのバスセンターは巨大だった。切符を売る窓口が1から・・・105まで並んでいる。そう、そこには105の窓口があり、その中では105人の係員が切符を売っているのだ。どうやら行先毎に窓口が異なるらしい。

(何と言う人件費の無駄だ。ここに数台の自動販売機を置けば、この105人の人件費がそのまま浮くではないか。)
 ジャパニーズビジネスマンはすぐにそう考えてしまうのだが、それを考えないところがタイの良いところだ。タイがそこまで合理化されてしまったら面白くないではないか。
 このバスセンターでは英語の表示が全くない。当然日本語も通じない。我々は行先を連呼しながら目的のコラート行きの切符を探した。

岸田  「コラート! コラート!」
K先輩 「コラート! コラート!」

 一つの窓口のおねえさんが、紙に数字を書いて我々に見せた。  

「49」
 そうか、49番窓口に行けば良いらしい。我々は49番窓口で「コラート」と告げた。
 ところが49番窓口のおねえさんは、また何か聞いて来る。そうか、コラートと言っても広いのだろう。降りるバス停の名を聞いているのかも知れない。
岸田  「ボーボーソウ・ガウ!」
 49窓口のおねえさんは、困った顔をしながら隣の窓口を示した。
 そして隣の50の窓口で「ボーボーソウ・ガウ」と告げると、まあ仕方ない。と言った顔で2枚のキップを売ってくれた。
どうやらこのボーボーソウ・ガウは極めて辺鄙な場所で、通常はバスの通らない場所らしい。たまにボーボーソウ・ガウに行く客が居ると、そのためにバスは遠回りしなければならないのだ。49の係員は、面倒な客を隣の同じ路線を走る別のバス会社に押し付けたのだ。
 この辺鄙な国で、そのまた辺鄙な場所。これはもう秘境ではないか。俺達の期待はますます高まるばかりであった。

 バスは比較的でかくてちゃんとした車だった。フィリピンのジープニーのようなものを想像していたのだが、これならば安心だ。

バス

 しかしそのバスは、見かけは立派だが、とんでもないボロだったのだ。おまけに道路はガタガタ。これに3時間も揺られて行くのは試練だった。
 風景はどんどん寂しくなる。俺達の頭に浮かんだのは、喜多郎の『砂漠幻視行』のメロディー。そうあのNHKの『シルクロード』のテーマソングだ。周りは砂漠ではなく熱帯雨林だが、秘境感には同等のものがある。
( もし、ボーボーソウ・ガウで降りられず、全然違う所に降りてしまったら・・・俺達は二度と日本に帰れないのではないか?    )
 そんな不安が頭を駆け巡った。

 何とか目的のバス停に着き、柴ヤンに電話を入れた。
柴木 「おまえら本当に来たのか! よく来られたなあ。まず無理だと思ったぞ。」

つづく



柴やんの解説:

 バスセンターには英語の表示が全くなかったとのことですが、タイの国策で観光産業に力を入れているはずなのに、観光客が沢山訪れる場所でも、英語表記が全くありません。
 バスは、ボルボやベンツやその他の有名なメーカーの名前が書いてあります。シャーシはそのメーカー製ですが、その他はタイの現地生産の物で、特に防水対策は悪くて、雨降りは至る所で雨漏りがしています。
 またエアコンのダクトよりの水漏れも、特別な事ではありません。タイでは完成車のバスの輸入はありませんので、メーカーの表示には騙されないように。
 最終的にはボーボーソウ経由でガウボーボーソウ・マイにて終点ですし、両ターミナル間は車で5分の距離ですのでご安心を。
正式な呼び名はナコンラチャシマと言い、俗称でコラート「高原と言う意味」です。

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