カーテンコール

by  チャーリー岸田 


 

昨日、例の『くるみ割り人形』に行って来た。
いやいや、凄いぞあれは。エリカカップ前夜祭のフィリピンダンス/ロシアンダンスよりも、蒲田のフィリピンパブのショータイムよりも、横浜のキャバクラのボディコンねーちゃんの踊りよりも、岸田&横田の山本リンダよりも迫力があった。
  スナックでカラオケ歌ってる場合じゃないぞ。ましてやTバックのおねえさんにチップ払ってる場合でも無い。

 『クラシックバレエ』なんて言うと、お上品で退屈なものだと思っている人が多いだろうし、岸田もそう思っていた。
しかし単なる見世物として見ても面白いぞ。
  コストパフォーマンスを考えても、キャバクラが1時間で1万円取られるのに対して、3時間近くでA席が9000円。これはお得だ。JUSTの皆んなも子供を実家に預けて奥さん連れて一回観に行ってご覧って。

岸田の職場の近くの『横浜アリーナ』では、聞いたことも無いようなタレントのコンサートでも凄い人出になる。それに比べてバレエの方は、百人近い出演者と生オーケストラを使って、それほど大きくないホールでやっている。どうしてこんな凄いものがミーハータレントのコンサートより客が少ないのだろう?  これはマーケティングに問題があるのではないか?  入場料と観客動員数と出演者の人数からざっと計算しても、大部分の出演者はほとんど無報酬かそれに近い状態で出演しているのではないだろうか?  出演者は今回の公演のために相当な練習をして来たことは明白だし、バレリーナってのは大変なんだろうな。

今回の公演は、例の文化勲章森下洋子さんと他のバレリーナが一日交替で主演するのだが、当然岸田は10月の結婚式で話をしたバレリーナが主演する回を観に行ったわけだ。
披露宴で見た彼女は、地味な服を着て世間知らずまる出しのとぼけた性格のねーちゃんだった。『今度初めて主演するんです。』なんて言っていたので、『じゃあ観に行ってやるよ。』なんて答えたのだが、さすがに松山バレエ団の主演を張るだけあって、舞台では見違えるようだった。
ラスト近くのクライマックス部分でソロで踊り、観客の大喝采を受け、幕が閉まった後でもカーテンコールに答えて何回も挨拶に出て来た。
ありゃりゃ、こりゃあ大スターじゃねえか?  俺みたいなお調子者が気軽に声をかけれれる相手とちゃうぞ。

 しかし岸田は公演終了後、でかい花束をかかえて楽屋に侵入した。気後れしながらも、せっかく花を買ってしまったのだから直接手渡さなければもったいないではないか。
楽屋に入ると、どどぉーんとど真ん中に大勢の取巻きに囲まれて主演バレリーナは立っていた。両手に沢山の花束を抱えて。

岸田「どうもどうも岸田です。」
   「あっ、覚えてます。10月の××ちゃんの結婚式でお会いしましたよね。」
  やりい!  覚えていたんだ。しかしそれ以上話す余裕も無い。何しろ主演者の周りには大勢の人垣ができているのだ。そのまま岸田は花束を渡し、すごすごと帰って来た。
 

 

Seaside Cafeのトップへ戻る
HOME